アート勉強ブログ

このブログは、アートに関わる仕事をしたい法律家の卵のアート勉強ブログです。 そもそもアートって何?ということを探求したり、アートオークションやイベントに行った感想であったり、気になる美術家さんのことをまとめるブログにしたいと思っています。

草間彌生展『わが永遠の魂』

草間彌生展『わが永遠の魂』に行ってきました!

草間彌生の人生を遡り、草間芸術の真髄に迫る圧巻の展覧会でした!

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まず入り口で目に入るのは近年のテーマとなっている正方形のキャンバスに描く作品群。ここでは撮影OKとなっているので(日本の美術館ではめずらしいことに!)、写真を撮りながらじっくりと草間の現在の芸術スタンスを堪能することができます。そしてここから、草間の人生を遡っていくこととなります。

 

初期作品

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現在の極彩色の世界とは打って変わって、初期作品は暗鬱・閉塞感の感じる作品となっています。草間は今で言うところの統合失調症のような症状があり、妄想幻聴に悩まされていたとありますから、他のひとには見えないものが見えてしまう、聞こえてしまう、という苦悩が絵に表現されています。この頃の作品にはどことなく、死の匂いがあり、死のぎりぎりのところで描いているような作品ばかりです。自分が自分ではなくなってしまうような、生きているのに自分が消滅していくような、ある意味「死」よりも怖ろしい感覚で生きていたのではないかと思わせるような暗さがあります。見ているとこちらまで鬱の世界に飲み込まれてしまいそうな、怖ろしさを感じます。

 

渡米後

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有名な作品、『無限の網』。この作品からは、苦しみから解放されて無我の境地に至ったような感覚を受けます。鬱屈した世界から抜け出して、悟りが開けたかのような、清々しい「無」の世界。展示からは"悟り"の過程は判明しないものの、小さな点描以外にははじまりもなく終わりもなく、モチーフもなく、完結もしていない、この絵の中には、見るものを迷いから救ってくれそうな清浄で神聖な空気感を感じさせてくれました。

 

社会派作品

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しかし草間はそこで終わらずに再び胎動をはじめます。今度は社会に向けてのメッセージを発信していくのです。草間作品は、ショッキングなもの、グロテスクなもの、死の匂いを感じさせるものへと変貌していきます。NYの現代アートらしい「なんだこれは?」という疑問を駆りた立たせる作品が多く、時代と環境に合わせて変化していく草間作品の力強さをこのタームでは感じることができます。
 

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いよいよ草間作品の代名詞とも言える「水玉」の作品群へと、作品傾向が移行していきます。均等な円を羅列していく水玉の作品群を見て私が感じたのは、生命や肉体への賛美でした。遠目から見ていると、円形の羅列は、人間の身体の一部、筋繊維や精子ミトコンドリアをモチーフにしているように見えて、それらの円形が躍動しているように見えてくれるのです。草間はこれで、生命の躍動感、肉体やものを形作るフォルム、構成体の美しさに気付いていく過程なのではないかと、私にはそう感じました。
 
正方形キャンバスの作品群

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壁一面に展示された極彩色の作品群からは、圧倒的な生命力、迫力、エネルギーがくらくらしそうになるほど押し寄せてきます。そこで感じられるのは、人生の喜び、世界の美しさ、といった人生を昇華しきった草間のメッセージです。今、人生が楽しいのだと、その喜びに力いっぱいに溢れ、こどものような純粋な気持ちで人生を謳歌している、ワクワクとした高揚感を感じさせます。
 
2016年から

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しかし、2016年のある時期を境にスッと印象が変わります。正方形キャンバス群の特徴をなす、けばけばしい色使いやド派手な模様が消えて、抽象的な文様に様変わりします。ポップアートの女王「草間らしさ」はある意味なくなるものの、洗練された点描の渦は『無限の網』を思わせ、原点回帰したのではないかというような印象を受けます。私は正方形キャンバスの作品群の中ではこの2016年からの作品が一番好きです。人生の楽しさを書ききった草間がまた新たなフェーズに入っていることを感じさせ、いまだ進化を続ける創造力に驚きを感じざるをえません。
 
草間芸術とは

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草間作品に共通しているのは、「点」「円」つまり円形の描写です。草間作品を一通り見ると、この世界のマクロなものもミクロなものも、全て「円形」で構成されていることに気付きます。惑星、太陽、地球、月…植物の実、水滴、瞳。もっとミクロなものになれば、細胞、細胞の中の構成物、そして究極的には分子、原子、素粒子も球体です。「円」に森羅万象の構成物が包含されていることに、最初から意識せずにも草間は気付いていたのです。時代により描くテーマは変われども、人生において一貫として円をモチーフとし、森羅万象、宇宙を描き切る、という芸術家としてのセンスに震える思いがしました。その「円の普遍性」こそが草間芸術の真骨頂なのだと思います。
 
見応えたっぷりです!ぜひ見に行ってくださいませ!
 
以上